_塚本三郎元民社党委員長小論集_ _当会支部最高顧問、塚本先生世評_

混迷の日本を脱け出す道   平成二十三年二月上旬   塚本三郎

菅総理保身の悪アガキ

 支持率が一%になっても総理を辞めない、と菅直人総理が云ったとか。身内からこんな言葉がメディアに伝えられた。――その言葉は、私は民主主義ではございません、独善的地位を死守します、との意志でもあろう。ならば、堂々と所信(国家観)を述べ、閣内意志を統一して、公約を実行してくれなければならない。

支持率が二〇%台となり、危機的状態になっていても、なお延命の道を模索している。

政権維持の為、信念をもって施政権を発揮しようとするならば、僅か二〇%台の支持率は「不本意である」と云って、衆議院を解散して、国民に信を問うべきではないか。

既に各報道機関が論評しているが如く、延命の悪アガキのみが目立つ。

菅総理は、年末から年始にかけて、今度は支持率回復のため、マスコミに向かって世論と大衆への迎合の政策、つまりは思い付きの政策を連発している。

菅総理を評して「国家観無きスタンド・プレー」だと評したのは、西岡武夫参議院議長である。菅総理は、恥も外聞もなく無意味な改造内閣を行ない、場当たり的な挑発行為に狂奔している姿は、落ちゆく日本をそのままを映し出している。

菅総理をその地位に就けた国民は、民主主義政治の欠点を、痛く思い知らされつつある。こんな人物を総理の座から引きずり降ろせない日本国の法制に、国民はいらだっている。

与謝野氏を閣内に取り込んで、消費税実現の担当大臣に据えた。与謝野氏は自民党候補として落選したが、自民党票の比例で当選した。その彼が、そのまま、民主党政権に加わることは変節である。変節は人のの中で一番醜い。しかも相手である民主党を批判してきた、その党の内閣に入ったのであるから、民主党へ行くならば、そのバッジを外し、自民党へ返すべきだ。菅総理が、消費税の増税を求め、それに応じても、日本が直面する重大課題の中の最重要の「消費税増税の実施」について、可能か、否かを見極める見識が不足して居りはしないか。民主党は、さきの衆議院選で、今の政権では「消費税は増税しない」とマニフェストで宣言し、それに沿って民主党内は進んでいるのに。

景気回復のキメテ公共事業

 長く続き、未だ回復のキザシさえ見えない経済不況に対して、菅内閣は、その処方を見失っている。否、回復に必要な手足を、自らが切り落としていることにさえ気付かない。 

経済の素人である国会議員に、ムダを省くと宣伝させて、劇場政治とも云うべき「事業仕分け」を三回も、マスコミので演じて見せたことによる。その結果は、子供手当ての費用捻出のため、「公共事業を切り捨てた」ことのみが目立つのだった。

 最悪は、「コンクリートよりも人へ」である。その上、政治指導と称して一度も、手形や小切手を切ったことも、見たことも無いような、経済の素人代議士が、景気回復を論ずる珍風景である。今日まで、批判と要求のみを重ねた、野党暮らしから未だ覚めないようだ。

景気回復と、失業率を減らす当面の施策は、公共事業の回復から手掛けるべきである。

日本国民は春夏秋冬の、恵まれた数々の自然現象の下で育ってきた。

日本列島は極寒の北辺も、常夏の沖縄も、大自然に恵まれ、美観を保ってきた。

日本の国土は、観光立国としての地位を保つことができる。またそれ以上に、この優れた大自然の環境は、それに順応してきた日本人の心の優しさと、それに伴う生活態度を練り上げて来た。それが人間の本来の姿であり、日本文化そのものである。

環境が、日本人の心と態度を創り、守って来たのだ。

自称文化人は、環境を破壊し、自然を征服することが、近代化だと誤解して来た。

環境の整備にもお金が必要である。しかし、正しく整備すれば、かけてくれた投資以上に、お金を戻してくれる。「悦んで出すお金は、仲間を引き連れて戻って来る」と言う。

これは、或る宗教教団の標語であった。この言葉こそ、誠の教訓と受け止めたい。

だから、地震も、津波も、暴風雨も、旱魃も、悪疫の流行も、それ等の災禍を、恩恵に転化することが、人間として為さなければならない天命ではないか。

個人では、それ等に立ち向かうことは無理で、国家としての大事業が待たれる。それが公共事業である。公共事業は、単に自然の災害や、不便を克服するのみと勘違いしてはならない。より良い環境を造らしめる、「天の啓示」と受け止めるべきである。天災と呼ぶ大変化も、我々が、より良き人間生活へと成長するためだと、前向きに対処すべきである。

思えば民主党政権発足の当初、「コンクリートよりも人間を」が合言葉、否、キャッチフレーズとして、大衆的人気を集めたことを思い出す。いかに前政権を非難するとしても、

こんな馬鹿な言葉を用いる政党と政治家が、日本に居たことを残念に思う。

金融の無国籍化に対処

 アメリカのドルが、国際通貨として合意し、世界に認められて出発したのは、当時世界一の金(約八〇%)を保有していたからである。当時「ドル即ち金」となる兌換を約束した(一九五二年)。当時は、一ドルが三六〇円であり、金は、一グラム四〇五円の価値で交換すると約束され、以来約二十年間、世界はドルを国際通貨と信じて通商貿易した。

ドル・ショックで、アメリカは、ドルと金との交換を停止したのは一九七三年であった。その後、金の裏付けなきドルの今日は、一ドル八十三円となり、約束の四分の一以下になった。金は一グラム三八〇〇円で、約九倍に暴騰している。

 ドル・ショック直前、フランスの大統領ドゴールは、米大統領ニクソンと論争の末、フランス国民が所有する約七十億ドルを、約束どおり一グラム四〇五円で全額のドルを金と交換させ、ニューヨークから、軍艦に金を積み込んで、凱旋将軍の如く、フランスに持ち帰った。直後のドル・ショックで、金の国際価格は約十倍にハネ上がった。

 ドゴール大統領が、フランスの英雄と呼ばれる所以である。

 当時の日本では、佐藤総理に対して、わが民社党が、金との交換を強く提案したが、日本政府は、アメリカに気兼ねして見過ごした。当時日本は七十五億ドルを保有し、世界であった。日本国家は、巨額の損失を受け国際金融の変動と、そのすさまじさに驚く。

 今日の日本は、約一兆ドルの米貨を保有している。一昨年のリーマン・ショックによって、当時百十三円だったドルは、今日では約八十三円でしかなくなった。約三〇円の円高である。換算してみると、アメリカに対して約三十兆円の損失である。

 無国籍者と呼ばれる米貨のドルが、世界中を迷走しつつある。もそのスピードが速く、いや早過ぎる。各国の金融責任者は、これに対処することの必要を痛感している。

 リーマン・ショックによって、アメリカは大恐慌に襲われた。そのとき、直ちにドルを増発して、不況に対処した。僅か一年余で、日本円に換算して、約二百兆を増発し、尚、足りないからとして約五十兆円程度を増発しつつある。かくして、一ドル百十三円が八十三円へと円高、即ちドル安を招き、日本の手持ちドルの損害は前述の如くである。

アメリカに対して、最大の輸出国である中国もまた、元安を誘導すること、日本円で約百兆、更に約五十兆程の追加を行ないつつある。

 日本が、アメリカと中国の自国経済防衛のため、(デフレと雇用確保)に必死で対策を講じている。その結果、津波の如き通貨の増発が、そのまま日本経済へ、円高として押し寄せているのに、経営の経験も、通貨の実体も知らない菅政権は、唯々諾々と日本銀行の官僚的手法に任せ、何等政治的施策を指示しない。否、指示するための見識さえ学ばない。

デフレと失業を救う具体策

 円高は、日本経済にとって致命的打撃を与えている。よって円高を正常に戻す為に、アメリカや中国と同様に、日本も、通貨を増発して、対抗することが不可欠である。  

その第一の対策は「異常事態」として、通常の国債ではなく、政府の「通貨発行権」を活用し、政府紙幣の発行を提案する。これには異論もあるが、今日は非常事態である。

またデフレによって招いた、約四百兆円とも云われる日本経済と、生産力の空洞化を、ゆるやかなインフレ方向に円高を是正し、輸出拡大と雇用の創出を計る絶好の機会である。

その為には、まず約五十兆円ほどの政府紙幣の発行を日本銀行に指示する。

アメリカの二百五十兆、中国の百五十兆に比べて、五十兆の増発では少ないが、日本国には、経済に余力が在るから、あらゆる対策が可能となる。特に次の如き項目を行なう。

政府通貨によって、先ず防衛力を強化すること。日本国周辺の共産国は、日本列島の北と南の島々を狙っているから、早急に海と空の防衛力を強化充実すること。

続いて日本列島の改造即ち、おくれている日本海側等に、新幹線新設と、その延長を進めるべきだ。­――また都会や観光地の電線をはじめ、電話線、ガス管等の施設を「共同溝」として、下水と共に地下に埋めて、名実共に観光大国日本を再現すること

また、国土の大半は、緑の山に森林が密生しているから、間伐を行って山の木を育て、水源となる治山、治水を守ることに全力を注ぐべきである。

その第二は、通常の手段として、「円高を活用」して、日本経済と国民生活に必要とする資源を大量に買い入れ、備蓄するべきである。例えば鉱物資源やエネルギー資源等を。

 その第三は、日本の進出に期待を寄せている、安定した各国に対して、その国の企業が発行している株式を取得し、資本と技術を投入して、円高によるドルへの強みを果たす。

日本が受けた円高を、単なる損失として見逃さず、円高は対外的には絶対の強みであるから、政府が国家方針としてこれを最大限、先頭に立って活用を指示すべきである。

高い賃金を受けている日本人には、雇用が激減している。各企業が多国籍化して海外へ移動しつつある。それに対応出来るのは、「公共事業」及び以上の諸施策である。

非常事態だから政府紙幣の発行は、大胆に実行する時である。――重ねて言う。デフレで、日本産業と公共事業は空洞化し、失業率は、日本人の魂を失わせている。

日本の近代政治史上、既に明治維新に、高杉晋作、木戸孝允、大久保利通等が「太政官札」と呼ぶ、政府紙幣を発行して、明治維新の大業を成し遂げた。

昭和の大恐慌(昭和四年)には、高橋是清蔵相が、金との関係を断ち切ると宣言して、通貨を大増発して、恐慌を乗り切った。せめて今回は、国際通貨ドルが、リーマン・ショックの直前の一ドル百十三円になるまで、「打ち出の小槌」として政府通貨を出すべきだ。

今日の国民には、約一千四百兆円の預金(現金)を保持しているのだから自信を持とうではないか。


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