李登輝元総統談話
平成22年(2010)6月11日台北御自宅にて【3】
 国家としてうまくやっていくには>>
――― 人間は、家族、部落、国家としてうまくやっていくには、素質と能力が。素質は、信仰度と品格。能力は、組織をつくったり、文明だったりする。時間と空間の問題。台湾は日本から離れる。1945年、日本は台湾を放棄、台湾は何をすればよいか分からない。台湾が一番華やかだったのは1932、3年。戦後、努力して、そこまで戻した。日本が戦争で困っていたとき、台湾では、米を食べたいで日本へ送ったことを知っているか?
 大陸から人間が入り、米が足りなくなり、マッシュルーム、アスパラカスなどを作り、農業が変わる。今度は、労働者不足になり、農業に比べ、労働力を必要としない工業を発展させ、それが、電子産業となった。 時代が変わってきている。人間を人間として大事にすること。
上海万博以降は?>>
――― 大阪万博で日本は世界で有名になったが、中国が同じようになるか?博覧会の歴史は長く、時代が変わってきている。台湾で万博をしても観光客から儲けるくらいでしかない。
朝鮮半島情勢について>>
――― 戦争はしないと思う。北朝鮮は何かを起こして問題があれば良いと思っているようだが、戦争は、「何か」あったときに起きる。これだけ準備をしているほうが起き難い。 6カ国協議をして中国に「親分としてなんとかしろ」と説得するべきだ。朝鮮から起き無いと思う。あるなら、グアムと中国大陸の間で起こる。対馬海峡からマラッカ海峡まで、西太平洋の覇権を誰が握るか?西太平洋のコントロールだ。
 アメリカも今の状態では無理。戦艦何十隻などの大規模な戦争をやる時代は終わり。
 第二次大戦前、ロンドン軍縮会議で日本は、軍艦の隻数制限を受け、それならばと、長門や大和を作った。作ることを言い出した人間がいたら「お前は馬鹿か」と言ってやりたい。結局、役に立っていない。大和は、4.000人を乗せて沈んだ。今は、こういう考えで中共と戦争しないようにしている。
 航空母艦、駆逐艦、潜水艦。今の中共はアメリカに負けないように金でやっているが、怖いのは、第1に原子力潜水艦、第2にロケット、第3に衛星。 グアムからバシー海峡、琉球、アメリカが通るところを中国は調べ上げている。

 麻生さんが訪台したが、その感想>>
――― 特に無い。吉田さんの孫という認識。

 中国の国民総動員法について>>
――― 中国が国家全体をまとめるのは無理。道州制を用いなければ、七つの国に分かれる。皇帝型思想から、民衆自由形に変える必要がある。皇帝型は、自分の冨を拡大する。チンギスハーンはヨーロッパまで行ったが、西へ進めば大きな国が作れると考えたから。今は、そういう時代ではない。胡錦濤と江沢民は考えが違う。しかし、胡錦濤は自分だけの考えは通せなくなっている。
 日本の民主党の印象>>
――― 菅さんの話は長かったが、鳩山さんよりは上手くやるだろう。インフレーションを起こし元気付ける必要がある。民主党は、松下塾の若い人達が育てば良くなる。村山(元総理)のころのようなことはいけない。阪神の地震、あれはだらしない。人民の苦しみは首相の苦しみだ。

 李登輝先生は、中国が台湾を圧迫すれば自分は最前線で戦うといわれたそうですが、李登輝先生に育てられた、若いリーダーと日本の若いリーダー同士で交流をさせたいが>>
―――歓迎します。アイデンティティーを持つだけでは駄目。価値と品格。教養、素質の無い指導者では駄目だ。素質と能力、そして信仰心を持ち、人間の存在の意義を希求し、公を知り、カリスマの真似をしない。
 有能な組織を作り、自分の行動原理をはっきりと作っておく。私の行動=総統を離れ、農業経済学者となる。人民への愛を示す。命令的な問題ではなく、人間性のあるやり方。これが、はっきりしているのが軍隊。昔は、「撃て」「突撃!」で出来たが、今はそうは行かない。飛行機もあれば戦車もある。個別の人間性に基いた発令がある。これは、日本的で経営でも重要。 山登り、神学校へ行き、人間の生きる根源を探求する。
←前ページへ戻る  次へ⇒